■桃の夫婦 パートU
昔むかしあるところに、一度は壊れかけた夫婦でしたが、桃仙人の教えのお陰で、「は」を使わずに「も」を使うことによって何とか仲直りをし、幸せに暮した夫婦がおりました。
夫婦円満に暮し始めた二人でしたが、一年もたたないうちに、どちらともなく心の奥底に幸せとは裏腹な小さな「不満」が芽生えてくるのを感じ始めました。しかし夫婦はそれを押し隠して一日でも長く幸せな夫婦を続ける努力をしておりました。
[桃仙人]-12/06 22:38
ある晩、夫が村の会合に出かけ、話し合いの後の酒席に出たところ、たまたま向かい合って座った年下の青年が話しかけてきました。
「あんた、村長にならないかい?」
突然の言葉に驚き、「わたしはそのような者になれるような男じゃありませんから・・」と断りました。
[桃仙人]-12/06 22:40
帰り道、初冬の細い月を見上げながら、かみ締めるように歩いた一歩一歩が、大切なものを一歩ずつ壊し、しかし一方で、一歩ずつ希望ある未知の世界に進んで行くようで、「それはいけない!」と心の中で叫び、何度も立ち止まって歩を止めました。
年下の若者が言い出した「あんた、村長にならないかい?」という台詞が何度も何度も頭の中で響きました。打ち消そうとしてもどうしても消えない言葉の繰り返しに苛立ちながらも、「なれるかな?」と自分に聞いてるもう一人の自分がいることに気づき始めました。
[桃仙人]-12/06 22:42
そんなことがあった後も、夫は毎日毎日冬支度に精を出し、家に帰ってからは「も」を使って「俺も手伝ってあげるよ」と妻に優しく声をかけ、一緒に器を洗ったり、洗濯物を干したり、湿った布団を干して「パンパンパン!」と叩いておりました。
ようやく青年の言葉が耳から離れ消えた頃、村の長老からお呼びが掛かりました。
長老は、「わしはもう歳じゃ。これからはお前の番じゃ。おまえがやる気さえあれば、わしはどんな反対もねじ伏せてお前を村長にするつもりじゃが、お前はどうだい?」と勧めてきました。
[桃仙人]-12/06 22:45

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by momoco 4d
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